ACEとは"The Adverse Childhood Experience"の略で「逆境的小児期体験」のこと。このうちFelittiらは生後18年間の、身体的、心理的、性的虐待の3つの他、5つの家庭機能不全(生育家庭において、服役中の人がいた、母親が暴力をふるわれていた、アルコールや薬物乱用者がいた、慢性的にうつ状態か精神疾患をわずらっていたか自殺の危険のある人がいた、理由は何であれ親を失った)の8つの項目について調査を行い、小児期のトラウマが、大人になってからのさまざまな疾患の罹患やリスク行動と有意な関連性を持っていることを示した。
ACEスコア(ACEの8つの項目のうち経験したものの数)と慢性肺疾患、虚血性心疾患、癌、糖尿病などの身体疾患、運動不足、肥満、喫煙、50人以上との性行為などといった本人の健康に害となるリスク行動、アルコール依存、薬物依存、うつ、自殺企図などが量反応関係をもって連動している。
ACEの影響は行動や身体レベルに確実に蓄積していく。宮地尚子は「生きづらさを抱えながら大人になり、アルコール依存などの問題を抱えた人間が、自己の生きづらさの原因を生育家庭に求める図式、つまりアダルトチルドレンという概念は、被害者としての大げさな物言いでも、被害妄想でもなく、起きている現象をありのままに伝えていた」と、ACE研究から結論付けて良いのではと述べている。
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